NASとSANによるファイル共有

 新規でファイル共有を行う場合、現在はクラウドサービス、グループウェアの検討を先に行うべきだと思います。

 それでも、オンプレミスでのファイル共有の方が良いという場合は、規模に応じて、NAS→SANの導入を検討します。
 ここでは、NAS、SANの仕組み、製品についてまとめます。

1.NAS(Network Attached Storage)とは

 NASはネットワーク接続できるLANポートを持ったストレージのことです。上図のように、ネットワークにNASを直接接続し、ファイル共有場所として利用する、一番単純なエントリレベルのファイル共有です。しかし、NASの製品レベルにもよりますが、アクセス制限、RAID構成など、ファイル共有するにあたり、必要な機能は、充分備えています。

 因みに、DAS(Direct Attached Storage)とは、NASと対比して、USB等で接続するネットワークを利用しないストレージのことを言います。


 NASのデメリットとなるのは信頼性です。仕組みが簡単なため復旧は容易ですが、SANのように冗長化に対応できないため、NASが故障すると、ファイル共有が利用できない障害に直結します。すなわち、ダウンタイムが許されないシビアな運用には向きません。


 さらにもう一点、アクセス速度です。NASはTCP/IPを利用し、アプリケーション層ではファイル共有プロコトルであるSMB、CIFS(Windows)、NFS(Linux)プロコトルを利用して、ファイル単位でデータのやり取りを行う標準的な方法を取っています。これに対しSANではより高速な通信を実現するため、アプリケーション層ではSCSIプロコトルを利用し、データブロック単位での通信を行う方法を採用しており、通信速度はNASが劣ります。一方、SANは通信速度向上と引き換えに仕組みが複雑化し、運用の難易度が上がるばかりです。


NASの製品

 バッファロー、IOdataが企業向け、個人向け両方。DELL、HP、NEC、富士通等が企業向け製品を販売しています。


 ~ バッファロー テラステーション ~ 

 NASと云えばというくらい、テラステーションは認知度が高いです。安価で基幹系以外のファイルサーバーとして、多くの企業で導入されています。

バッファロー テラステーション(http://buffalo.jp/products/catalog/storage/terastation/)


2.SAN(Storage Area Network)とは

 一番単純なSANは上図のようなイメージです。ユーザからは、あたかも一つのストレージのように見え、意識することなく共有ファイルを利用できますが、実際はファイルサーバー、ストレージ、テープドライブ等のストレージ機器を結ぶネットワークが構成されており、ファイルサーバーを入口としてバックグラウンドのネットワークが存在する仕組みです。このSAN内のネットワークはFC(ファイバチャンネル)と呼ばれるSAN独自のネットワークが利用されます。
 このSAN内のネットワークおよびストレージを冗長化することで、一部のストレージに障害が発生しても、ファイルサーバーとしては利用を継続できる、高信頼なストレージとなります。


 また、SANではアプリケーション層においてSCSIプロコトルを利用します。これは、例えばローカルコンピュータにUSBメモリを接続した場合に、データ転送で利用されるプロコトルと同じです。つまりテータ転送対象をあくまでデータとして扱いブロック単位で転送を行う為、アプリケーション層でSMB等プロコトルを使いファイルとして転送対象を扱うNASに対して、余計な手続きがなく通信速度が高速です。
 このSANによる高速通信の恩恵を受けると、あたかもローカルフォルダに共有ファイルがあるかのような錯覚を覚えるスピードとなりますが、この恩恵を受ける為には、各パソコンとSAN間にもLANではなくFC接続が必要ということになります。しかしそれでは、LANネットワーク以外に別途SAN用のFCネットワークが必要となるため、それを解消するため、LANのEthernetやTCP/IPネットワークを用いてSCSIデータ送るFCoEやiSCSI、FCIPといった方式が生まれました。
 これにより、SAN内ではFC、各パソコンとSAN間はiSCSIというようにトランスポート層以下では利用するプロコトルを変えつつも、アプリケーション層では一貫してSCSIプロコトルを利用することで、高速化が実現できることになりました。



 このように、SANを利用することで高信頼、高速になる反面、デメリットは、機器が高額なこと、運用が複雑になりすぎることです。

 因みに、SANを利用する高度なレベルになると、ファイルサーバーで、ストレージの柔軟な容量計画が可能となる、シン・プロビジョニングと呼ばれる実際のストレージ容量とは違う容量を設定する方法の利用も検討対象に挙がるようになります。


NASゲートウェイを利用したSANとNASの複合環境

 NASの一番の弱点である、冗長化を実現する方法です。通常のNASと違い、NASゲートウェイはストレージを持ちません。代わりにFC(ファイバチャネル)との接続インターフェースを持ち、SAN同様、FCによるSANネットワークを構成でき、冗長化が可能になります。
 ただし、この場合NASゲートウェイを境にLAN側はNAS同様、TCP/IPを利用し、アプリケーション層ではファイル共有プロコトルであるSMB等のプロコトルを利用する選択肢しかなく、SCSIプロコトルを用いた高速化は利用できません。



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