IT資格の分類と難易度レベル

 IT資格は、国家資格、民間資格、ベンダー資格といった、資格試験を実施する主催者によってに分類されます。
 また、プロジェクトマネジメント、ITアーキテクト、ソフトウェアデベロップメントといった、職種ごとにも分類されます。
 ここでは、これら2つの分類について詳しくまとめ、併せて、代表的な資格の難易度レベルもまとめます。

1.はじめに

 IT資格は一部例外があるものの、ほぼ全て認定資格です。

※ 認定資格とは:
資格取得により一定の実力や能力があることを、その資格実施団体が認定するもの。
その資格がないと業務ができないということはありません。


運転免許は資格。
運転免許を取得する事により、車を運転できようになります。
運転免許がないと車を運転できません。

情報処理技術者は認定資格。
情報処理技術者を取得する事により、情報処理技術者としての能力は認定されますが、
情報処理技術者を取得しなくても、情報処理の仕事に従事できます。

2.主催者によるIT資格の分類

2-1.国家資格

 管轄省庁別に3つの資格試験が行われています。


 ~ 経済産業省:「情報処理技術者」 ~ 

経済産業省が認定する資格です。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が試験を実施します。
IT国家資格として最もメジャーな資格です。
以下で説明しますが、職種ごとに資格が分かれています。


 ~ 文部科学省:「技術士 情報工学」 ~ 

文部科学省が認定する資格です。
公益社団法人 日本技術士会が試験を実施します。
大学や研究機関に従事する方が目指す資格で企業勤務の方が取る資格ではありません。


 ~ 総務省:「ネットワーク接続技術者 工事担任者」 ~ 

総務省の資格です。
一般財団法人 日本データ通信協会 電気通信国家試験センターが試験を実施します。
通信工事業者に勤務する方が、主に取る資格です。


※この資格は認定資格ではなく資格です。
 電気通信事業法で「電気通信回線に端末設置等を接続する場合は「工事担任者」が直接工事を行うか、
 あるいは実地にこれを監督すること。」とされています。


 試験の詳細はこちら(IT国家資格)で確認して下さい。


国家資格試験の問題点

 国家資格試験では、特定のベンダー名、商品名を出すことができません。例えば「Windows」や「Linux」という商品名は試験で使用できず「OS」としか言えません。名前を出すと、特定の企業に肩入れすることになるからです。
 このため国家資格試験は具体的な技術知識を問うのではなく、概念的な知識を問う試験になっています。この補完として、以下、民間資格(ベンダーニュートラル資格)、ベンダー資格があります。



2-2.民間資格(ベンダーニュートラル資格)

 民間のベンダーニュートラルな機関が、認定するIT資格です。
 OSSと呼ばれるオープンソースの知識を問う資格です。
 Linux Professional Institute(LPI日本支部)の実施するLPIC(Linux技術者認定試験)が有名です。
 国家資格に有効期限がないのに対して、民間資格には有効期限(5年等)があります。
 受験料が高額です。


 試験の詳細はこちら(IT民間資格)で確認して下さい。



2-3.ベンダー資格

 ベンダー(Vendor)とは販売業者、メーカーのことです。
 ベンダー資格とはそのメーカーが持つ技術を利用する技術者を増やし、自社製品の市場シェアを拡大する目的で実施する資格試験です。
 ある意味、受験者はうまく利用されていると言えるかもしれませんが、市場シェアが独占的に高まると、そのベンダー資格が、あたかも技術者必須の資格かのようになります。
 国家資格に有効期限がないのに対して、ベンダー資格に有効期限(5年等)があります。
 受験料が高額です。
 MOS(Microsoft Office Specialist)、シスコ技術者認定(CCNA、CCNP)、オラクル認定資格制度(ORACLE MASTER)等が有名です。


 試験の詳細はこちら(ITベンダー資格)で確認して下さい。



3.職種・難易度による国家資格の分類

国家資格「情報処理技術者」はITスキル標準(ITSS)の定める
職種ごとに資格が分かれます

 「ITスキル標準(ITSS)」とは経済産業省の策定した、各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を、明確化・体系化した規定、いわゆるフレームワークと呼ばれるものです。

 簡単にいうと、「この職種につきたいなら、このスキルが必要です。」という規定文書です。

 例えば、「プロジェクトマネジメント」という職種。下図の通り

  • システム開発

  • ITアウトソージング

  • ネットワークサービス

  • ソフトウェア製品開発

4分野のスキルが必要であると規定されています。
 さらにレベル1(低)~レベル7(高)まで、レベル規定されています。

 ※下図、黄緑色が存在するレベル


 「プロジェクトマネジメント」を例に挙げましたが、他にも以下のように職種と必要なスキルが規定されています。


職種 必要なスキル 職種の説明
マーケティング マーケティングマネジメント
販売チャネル戦略
マーケットコミュニケーション
顧客ニーズに対応するために、企業、事業、製品及びサービスの市場の動向を予測かつ分析し、事業戦略、販売戦略、実行計画、資金計画及び販売チャネル戦略等ビジネス戦略の企画及び立案を実施する。市場分析等をつうじて立案したビジネス戦略の投資効果、新規性、顧客満足度に責任を持つ。
セールス 訪問型コンサルティングセールス
訪問型製品セールス
メディア利用型セールス
顧客における経営方針を確認し、その実現のための課題解決策の提案、ビジネスプロセス改善支援及びソリューション、製品、サービスの提案を実施し成約する。 顧客との良好なリレーションを確立し顧客満足度を高める。
コンサルタント インダストリ
ビジネスファンクション
知的資産、コンサルティングメソドロジを活用し、顧客の経営戦略やビジネス戦略及びIT戦略策定へのカウンセリング、提言、助言の実施を通じて、顧客のビジネス戦略やビジョンの実現、課題解決に貢献し、IT投資の経営判断を支援する。提言がもたらす価値や効果、顧客満足度、実現可能性等に責任を持つ
ITアーキテクト アプリケーションアーキテクチャ
インテグレーションアーキテクチャ
インフラストラクチャアーキテクチャ
ビジネス及びIT上の課題を分析し、ソリューションを構成する情報システム化要件として再構成する。ハードウェア、ソフトウェア関連技術(アプリケーション関連技術、メソドロジ)を活用し、顧客のビジネス戦略を実現するために情報システム全体の品質(整合性、一貫性等)を保ったITアーキテクチャを設計する。設計したアーキテクチャが課題に対するソリューションを構成することを確認するとともに、後続の開発、導入が可能であることを確認する。また、ソリューションを構成するために情報システムが満たすべき基準を明らかにする。さらに実現性に対する技術リスクについて事前に影響を評価する。
プロジェクト
マネジメント
システム開発
ITアウトソーシング
ネットワークサービス
ソフトウェア製品開発
プロジェクトマネジメント関連技術、ビジネスマネジメント技術を活用し、プロジェクトの提案、立上げ、計画、実行、監視コントロール、終結を実施し、計画された納入物、サービスと、その要求品質、コスト、納期に責任を持つ。
IT
スペシャリスト
プラットフォーム
ネットワーク
データベース
アプリケーション共通基盤
システム管理
セキュリティ
ハードウェア、ソフトウェア関連の専門技術を活し、顧客の環境に最適なシステム基盤の設計、構築、導入を実施する。構築したシステム基盤の非機能要件(性能、回復性、可用性など)に責任を持つ。
アプリケーション
スペシャリスト
業務システム
業務パッケージ
業種固有業務や汎用業務において、アプリケーション開発やパッケージ導入に関する専門技術を活用し、業務上の課題解決に係わるアプリケー ションの設計、開発、構築、導入、テスト及び保守を実施する。構築したアプリケーションの品質(機能性、回復性、利便性等)に責任を持つ。

ソフトウェア
デベロップメント
基本ソフト
ミドルソフト
応用ソフト
ソフトウェアエンジニアリング技術を活用し、マーケティング戦略に基づく、市場に受け入れられるソフトウェア製品の企画、仕様決定、設計、 開発を実施する。また上位レベルにおいては、ソフトウェア製品に関連したビジネス戦略の立案やコンサルテーションを実施する。開発したソ フトウェア製品の機能性、信頼性等に責任を持つ。
カスタマサービス ハードウェア
ソフトウェア
ファシリティマネジメント
ハードウェア、ソフトウェア、施設に関連する専門技術を活用し、顧客の設備に合致したハードウェアの導入、ソフトウェアの導入、カスタマ イズ、保守および修理を実施するとともに遠隔保守を実施する。さらにIT技術を利用するための施設建設をサポートする。 導入したハードウェア、ソフトウェアの品質(使用性、保守容易性等)に責任を持つ。
ITサービス
マネジメント
運用管理
システム管理
オペレーション
サービスデスク
システム運用関連技術を活用し、サービスレベルの設計を行い顧客と合意されたサービスレベルアグリーメント(SLA)に基づき、システム運 用リスク管理の側面からシステム全体の安定稼動に責任を持つ。システム全体の安定稼動を目指し、安全性、信頼性、効率性を追及する。また サービスレベルの維持、向上を図るためにシステム稼動情報の収集と分析を実施し、システム基盤管理も含めた運用管理を行う。
エデュケーション 研修企画
インストラクション
担当分野の専門技術と研修に関連する専門技術を活用し、ユーザのスキル開発要件に合致した研修カリキュラムや研修コースのニーズの分析、 設計、開発、運営、評価を実施する。

 詳しくはIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)のサイトに随時最新版が公開されていますのでご確認下さい。IPA ITスキル標準V3(https://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/download_V3_2011.html)


 この職種ごとに定められたスキルを有するかを問う試験として「情報処理技術者」各試験が実施されています。職種、スキルと試験の対応表が下図です。

【図をクリックすると拡大表示します。】


国家資格「情報処理技術者」は4段階に難易度が分かれます

 上図の通り、資格の難易度レベルはレベル1(初級)~レベル4(中級)で規定されています。ちなみに、レベル5(上級)~レベル7(最高)は現場や研究によって身に付けられるものとして資格試験は実施されていません。別途認定制度があります。


4.民間資格・ベンダー資格も含めたIT資格の分類

ITスキル標準(ITSS)を元にした資格の対応表

 「情報処理技術者」試験については上記のように職種、難易度ごとに体系化されていますが、乱立する民間資格・ベンダー資格もこの体系にあてはめ、資格の価値を全体的に判断する目的で、特定非営利活動法人 スキル標準ユーザー協会が 「ITSSキャリアフレームワークと認定試験・資格の関係」という対応表を、以前公開していました。
特定非営利活動法人 スキル標準ユーザー協会(http://www.ssug.jp/docs/)

 ※現在は会員限定公開


 例えば「プロジェクトマネジメント」という職種の場合、下図のように国家資格のプロジェクトマネージャー(PM)と民間資格のPMP、ベンダー資格のシスコCCDE、オラクルOCJ-EAが対応付けされています。

   ITSSのキャリアフレームワークと認定試験・資格の関係(ISV Map Ver10r1)

 下図は、この表を参考に、メジャーな資格だけに絞り、国家資格、民間資格、ベンダー資格を色分けしてまとめたものです。【図をクリックすると拡大表示します。】


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