ネットワーク技術者は、サーバー、PC、スイッチ等の消費電力を含むリポジトリを準備しておく必要があります。
電気料金の見直し、データセンターでのハウジング計画、展示ブース出展でのPC持ち込み等、様々なケースで消費電力量の開示を求められます。
ここではその電力計算の方法についてまとめます。
1.電力計算の単位
V ボルト(電圧)
電気を押し出す力を表します。日本では通常100Vです。
海外の電圧はこちら(https://www.denshi-trade.co.jp/documents/acplug/voltage-plug.html)のサイトが詳しいです。ヨーロッパを中心に220Vが多く、アメリカは120Vです。ちなみに日本は世界一低い電圧です。高電圧、低電圧どちらが良いのかですが、高電圧の場合、感電や火災の危険がある、低電圧の場合、電気の伝導効率が悪くなる、と一長一短です。
A アンペア(電流)
電気の流れる量をAで表します。
VA ボルトアンペア(皮相電力)
電圧を加え、電流が流れれば、電灯が点き、モーターが回転します。このV(電圧)×A(電流)の電気エネルギーの大きさを示し、この値が大きいほど、単位時間あたり、電力を多く消費します。
また、以下のWワットと対比して一切の電力のロスがないと仮定した電力のことで、皮相電力とも呼ばれます。実際にはロスが必ず発生しますので、多めに見積りする際に良く利用します。
VA = V(電圧) × A(電流)で表します。
W ワット(電力)
単位時間あたりに、実際に消費される電気エネルギーをロスを加味して表したものです。
W =V(電圧)×A(電流)×力率(電力をどれだけ有効に使用できるかを示す値)です。
この力率が100%の場合、W = VAとなりますが、必ずロスは発生しますので、通常W <= VAです。
Wは有効電力とも呼ばれ、この力率から生じるロスする電力を無効電力と呼び、
VA(皮相電力) =W(有効電力) + 無効電力とも表せます。
Wh ワットアワー(電力量)
実際に使った電気エネルギーの量、つまり消費電力量を表します。
Wh(電力量) = W × h(使用時間)です。
例えば100Wの電球を1時間使用すれば、消費電力量は100W×1h=100Wh、10時間使用すれば、
100W×10h=1,000Wh=1kWh(キロワットアワー)となります。電気代はkWh単位です。
Hzヘルツ(交流電源の周波数)
まず、交流電源(AC)と直流電源(DC)の違いですが、交流電源は、電力会社から提供されるON、OFFのある波形の電源で、家庭や事務所のコンセントへ供給される電源です。一方、直流電源は電池などのON、OFFの無い継続的な電源です。
日本において、交流電源には周波数が50Hzと60Hzの2種類があり、新潟県の糸魚川を境に東が50Hz、西が60Hzです。IT製品の場合50Hz、60Hz両対応が基本ですが、安価な電化製品の中には一方のみ対応のものがあり、関東で購入して関西で使用する場合に注意しなければならない場合があります。
交流電源の周波数を統一していない国は少なく、東京で50Hzドイツ製の発電機、大阪で60Hzアメリカ製の発電機を電力会社が導入し、各々が規格統一することなく電力を供給したことが原因と言われています。
2.電力の計算の必要性と電気料金体系
そもそも、電力の計算をする一番の理由は最大A(電流)を求め、ブレーカーが落ちない最小A(電流)で電力会社と契約を結び、電気代を節約することにあります。
~ 東京電力のスタンダードプランSの場合 ~
【基本料金】
最大A(電流) |
基本料金(税込)/月 |
10A |
286円00銭 |
15A |
429円00銭 |
20A |
572円00銭 |
30A |
858円00銭 |
40A |
1,144円00銭 |
50A |
1,430円00銭 |
60A |
1,716円00銭 |
【電力量料金(1kWhあたり)】
電力量 |
電力量料金/1kWh |
最初の120kWhまで |
19円88銭 |
120kWhをこえ300kWhまで |
26円46銭 |
300kWh超過 |
30円57銭 |
※他に燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金、口座振替割引がありますがここではまとめていません。
~ 東京電力のスタンダードプランLの場合 ~
【基本料金】
VA(皮相電力) |
基本料金/月 |
1kVAあたり ※1kVA=100V×10Aなので10Aあたりということ。 ※契約は6kVA以上から |
286円00銭 |
【電力量料金(1kWhあたり)】
電力量 |
電力量料金/1kWh |
最初の120kWhまで |
19円88銭 |
120kWhをこえ300kWhまで |
26円46銭 |
300kWh超過 |
30円57銭 |
※他に燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金、口座振替割引がありますがここではまとめていません。
電力自由化が進み、様々な会社から電力を購入できるようになりましたが、この最大A(電流)については節約のため常に意識する必要があります。
データセンターでハウジングする場合は、ラック単位で30A、40Aというように最大Aが決められています。最大Aに収まるように電力を計算しなければなりません。
各種催しの展示ブースへの出展の際、電力量を前もって主催者に連絡するという場合も同じで、会場のブレーカーが落ちないよう事前に総電力量を確認するため報告が必要だということです。
3.電力の計算例
実際の計算方法ですが、例えば、パソコン、モニタ、周辺機器についてはアダプターや背面のシールを見て確認します。
例:ノートパソコンのアダプタ
INPUT:100V-240V ~ 1.0A-0.6A 50-60Hz
OUTPUT:15V-5A
参照するのはINPUTです。日本国内で使用する場合電圧は100Vなので、
電圧:100V
電流:1.0A
皮相電力:100VA
ということになります。
240Vの場合は0.6Aで144VAとなりますが、これは電圧240Vの海外で使用する場合です。
例:ハードディスク
定格電圧:AC100V 50/60Hz
消費電力:18W(TYP)
(TYP)とはTypical:「典型的な」という意味で、つまり平均値です。(MAX/MIN)と表記されている場合は最大値/最小値なので最大値を利用すれば良いのですが、この場合非常に困ります。
一定の倍率を加算する等、社内でルールを決め、他の機器との整合性を考えなければなりません。
そのまま計算すると
電圧:100V
電流:0.18A
電力:18W(力率100%とするなら皮相電力:18VA)
です。
4.変動する電力の考慮
電気代節約のため、さらに詳しい調査をする場合があります。夜間割引プランなど時系列の最大Aを検討する場合です。この場合は各機器の「運転中」、「始動時」、「スタンバイ」で電力に違いがあることも考慮して時系列の電力量を調べなければなりません。
ここまで調査を行う場合はバッファローやサンワサプライで「ワットモニター」と呼ばれる計測機器が販売されていますので購入して実際に計測を行います。
~ ワットモニター サンワサプライ:TAP-TST8N ~
