ここではマイクロソフトが開発するプログラム言語、Visual BasicおよびVisual Basic for Applicationsについてまとめます。
元となったプログラム言語であるBASICは1980年代、NEC等各メーカのパソコンに標準搭載されていたこともあり、簡易プログラム言語として広まりました。Visual BasicはこのBASICをベースにして、マイクロソフトが拡張を行ったものです。当初メモリ操作ができない等、本格的開発には向かないとされていましたが、現在ではそのようなハード制御はOS、フレームワークに任せるのが主流のため、組み込みシステム以外ではJava、C++、C#と何等変わらず開発言語として選択することができました。
しかし、2019年に.NET Frameworkの開発終了がMicroSoftからアナウンスされました。開発終了ですが、サポートは今後10年以上続くので今すぐではありませんが、後継の.NETがC#のみサポートしVBをサポートしないことから、新たに開発言語を学ぶ場合、VBはその選択肢から外すべきです。
1.Visual Basic
Visual Basicは、マイクロソフトが開発、販売するプログラム言語で、Visual Studioに組み込まれています。
コンパイル方式で、高速なアプリを開発できます。
Visual Basicの位置付けはあくまでVisual Studio上で利用できるプログラム言語の一つという位置付けです。というのもマイクロソフトの開発のコアはVisual Studioだからです。Visual Studioはどのプログラム言語で開発しても、同等品質のアプリケーションを作成できる統合基盤です。このため、他のプログラム言語のように言語を中心にIDE、フレームワークが存在するという体系と違い、IDEであるVisual Studioを中心として、プログラム言語、フレームワークが存在するという体系です。
.NET Frameworkの開発終了がアナウンスされ、今後、Visual BasicはVisual Studio上で利用できるプログラム言語から外される可能性が非常に高くなっています。
新たに開発言語を学ぶ場合はC#又はJavaを強くお勧めします。
2.Visual Studio
プログラム言語Visual Basic、C、C++、C#をサポートする、マイクロソフトのアプリケーション開発の中核となるIDE製品です。

Visual Studio(https://www.visualstudio.com/ja/)
~ Visual Studioのバージョン(Windows版) ~
バージョン |
リリース日 |
延長サポート期限 |
対応OS |
Visual Studio 2008 |
2008/02/19 |
2018/04/10 |
Windows7、Windows Server 2008/R2 |
Visual Studio 2010 |
2010/06/29 |
2020/07/14 |
Windows7,8.1,10、Windows Server 2008/R2,2012/R2,2016 |
Visual Studio 2012 |
2012/10/31 |
2023/01/10 |
Windows7,8.1,10、Windows Server 2008/R2,2012/R2,2016 |
Visual Studio 2013 |
2014/01/15 |
2024/04/09 |
Windows7,8.1,10、Windows Server 2008/R2,2012/R2,2016 |
Visual Studio 2015 |
2015/07/20 |
2025/10/14 |
Windows7,8.1,10、Windows Server 2008/R2,2012/R2,2016 |
Visual Studio 2017 |
2017/03/17 |
2027/04/13 |
Windows7,8.1,10、Windows Server 2012 R2,2016 |
Visual Studio 2019 |
2019/04/02 |
2029/04/10 |
Windows7,8.1,10、Windows Server 2012 R2,2016,2019 |
Visual Studio 2022 |
2021/11/08 |
2032/01/13 |
Windows10、11、Windows Server 2016,2019,2022 |
2021年11月8日、最新版「Visual Studio 2022」がリリースされました。
Visual Studio初の64bit版で処理速度の大幅向上が期待できます。(開発するアプリの話ではなく開発環境の動作速度向上)
マルチプラットフォーム(Windows、Linux、macOS上で利用できる。)となった.NET Frameworkに変わる.NET 6に対応した開発環境です。
その他は、プログラム実行中にプログラムコードを修正できる(停止、実行を行う必要がない)ホットリロードなど編集、デバッグ関連の機能が大幅に改善されています。
~ Visual Studioのバージョン(Mac版) ~
バージョン |
リリース日 |
延長サポート期限 |
対応OS |
Visual Studio 2017 for Mac |
2017/05/10 |
2019/03/08 |
macOS X El Capitan 10.11、macOS Sierra 10.12 ※開発言語はC#のみ対応 |
Visual Studio 2019 for Mac |
2019/03/08 |
※注 |
macOS High Sierra 10.13、macOS Mojave 10.14、 macOS Catalina 10.15 ※開発言語はC#のみ対応 |
Visual Studio 2022 for Mac |
近日リリース |
|
|
※注:Visual Studio for MacはMicrosoftの新しいサポートポリシー「モダンライフサイクルポリシー」によりサポート期限が定められます。
この「モダンライフサイクルポリシー」では新バージョンがリリースされた場合、新バージョンにアップデートすることで引き続きサポートを受けることができます。旧バージョンのサポートは新バージョンのリリース日にすみやかに終了となります。
つまりVisual Studio 2017 for Macを利用していたユーザーはVisual Studio 2019 for Macがリリースされた際、最新にアップデートしないと継続的にサポートを受けることができなくなるということです。
Community版は無償で、有償版はサブスクリプション契約期間中であれば無償でバージョンアップできます。
昔のようにパッケージを買い替えるという発想ではなく、サブスクリプションプランに対応したサポートの方式と云えます。
このため最新のバージョンにはサポート期限がありません。次のバージョンのリリース後、旧バージョンはただちにサポート終了となります。ただしVisual Studio for Mac自体の継続的な開発を、Microsoftが取り止め、今後の新しいリリースをしない場合は、サポートを中止する旨少なくとも12ヶ月前にアナウンスします。この場合にのみ、サポート期限が設定されます。
~ Visual Studio のエディションと価格(Win・Mac共通) ~
Visual Studioの無償版と云えばVisual Studio 2017までは機能制限されたExpress版が提供されていましたが、2019よりProfessionalと同等機能のCommunity版のみが無償提供されるようになりました。個人に加え、企業でも下図の通り条件を満たせば無償利用できます。
しかし、5名を超える場合で無償利用したいなら、過去バージョンのVisual Studio 2017 Expressを利用するしかありません。
Visual Studio 2017 Expressのサポート期限は2027年4月13日なので、かなり猶予期間はありますが、これ以降はCommunity版に変えるしかありません。
有償版のProfessional、Enterpriseですが、これら2017よりOffice365と同じ販売形態、バージョンに依存しないサブスクリプションモデル(月額/年額定額制)であるVisual Studio サブスクリプションでの提供となりました。
エディション |
標準価格 |
備考 |
Community |
無償 |
機能はProfessionalと同じです。 企業の場合、PC台数250台未満かつ年商1億円未満であれば、当該組織は5名まで利用可能です。5名を超える場合はProfessionalの購入が必要になります。 |
Professional |
¥154,095/2年(税込) |
1ライセンスあたりの価格です。 1ライセンスで1ユーザーです。 2年後の更新時は¥102,687/2年(税込) |
Enterprise |
¥770,991/2年(税込) |
1ライセンスあたりの価格です。 1ライセンスで1ユーザーです。 2年後の更新時は¥330,168/2年(税込) |
Visual Studio 2019ではProfessionalに限り、従来の買い方であるスタンドアロン版(単体ライセンス)を1ライセンスあたり約6万円で購入できました。(最低購入数3ライセンスから)
しかし、Visual Studio 2022では現状スタンドアロン版は販売されておらず、サブスクリプションのみとなるようです。
~ Visual Studioで開発できるアプリケーション ~
主な開発できるアプリケーションの一覧です。マルチプラットフォーム化し、多岐にわたる開発が可能となりました。
種類 |
アプリケーション |
実行環境 |
言語 |
Windows |
WindowsFormsアプリ |
.NET Framework |
VB,C# |
WPF |
.NET Framework |
VB,C# |
.NETクラスライブラリ |
.NET Framework |
VB,C# |
ネイティブ(Win32)アプリ、DLL |
Windowsの標準API |
C++※ |
Windowsストアアプリ |
UWP |
VB,C++,C#,JavaScript |
ASP.NET |
IIS、.NET Framework |
VB,C# |
Node.Js |
Node.Js |
JavaScript |
macOS |
フォームアプリ |
.NET |
C# |
ASP.NET MVC |
IIS、.NET |
C# |
Android、iOS |
ネイティブアプリ |
Xamarin |
C# |
ハイブリッドアプリ |
Cordova |
HTML,JavaScript |
.NET Frameworkが開発終了となり、サポート終了が10年以上先ですが予定されています。現在.NET Frameworkを利用しているものは。NETに置き換わり、言語にVBが利用できなくなる、もしくはそのものが利用できなくなります。(例:ASP.NETは利用できなくなる。後継はASP.NET MVCが推奨されている。)
※C++が利用できるアプリケーションではpythonも利用可能になりました。
3.Visual Studioのランタイム実行環境が.NET Frameworkから.NETへ
.NET FrameworkはVisual Studioで開発したプログラムのランタイム実行環境。つまり、開発したプログラムとOSの橋渡しをするものです。
加えてフレームワークでもあります。様々なライブラリをVisual Studioに提供し、そのライブラリを利用することでプログラムの開発が楽になります。
このようにVisual Studioにとって欠かせない.NET Frameworkですが、開発終了がMicroSoftからアナウンスされました。、後継は.NETというWindows、macOS、Linux上でも動作するマルチプラットフォームのランタイム実行環境です。
詳しくはこちらにまとめています。
4.Visual Studioのアドオン、ソース管理
アドオンは、一昔前はプログラムの省力化を目的としてサードパーティのアドオン製品、
・GrapeCityのSpread、InputMan
・ウイングアークのSVF
・SAPのクリスタルレポート
などが多くの現場で利用されていましたが、現在では、あまり利用されなくなりました。
ソース管理は、過去Source Safe、Team Foundation Server (TFS)、Visual Studio Team Services (VSTS)などがありましたが、現在ではAzure DevOpsにおいて、Gitによるバージョン管理、継続的インテグレーション管理など用いて、総合的にソースを管理します。
5.Visual Studio Code
Visual Studioでは未対応のJavaを含む、ほぼ全てのプログラム言語に対応するコードエディタです。マルチプラットフォームでWindows、macOS、Linix上で利用可能です。2015年にマイクロソフトからリリースされました。OSSではないVisual Studioと違い、無償。商用可。OSSのMIT Licenseで運用されています。
ただし、あくまで単純なコードエディタなので、例えばコンパイルを行う場合は別途対応する言語のコンパイラをアドオンする必要があります。そしてコマンドを入力してコンパイルするという流れです。Visual StudioのようにGUI画面上、ボタン一つでコンパイルという便利さはありません。

Visual Studio Code(https://code.visualstudio.com/)
6.VBA(:Visual Basic for Applications)
Microsoft Officeのマクロとして知られるプログラミング言語です。Visual Basicをベースに、Excel、Access、Word、PowerPointなど、Officeのアプリケーション・ソフトウェアの機能をプログラムにより自動化する際に利用します。
VBと同じくコンパイル方式ですが、マクロ実行時に自動でコンパイルされ、その速度は非常に高速なので、必ずコンパイルしておく必要はありません。あえて手動コンパイルが必要な場合はプログラムコードが多くなり全体のデバッグしたい場合のみです。IDEはOffice製品に付属しています。
7.VBS(:Visual Basic Scripting Edition )
VBScriptとも呼ばれます。Visual Basicをベースにしたスクリプト言語で、主に、
・ASP上でのサーバサイドスクリプティング処理
・Windows Script Host(WSH)を利用したWindows上でのスクリプト
に利用されます。テキストエディタ、コードエディタ、Visual Studioなどを利用して作成します。