仮想化の方式と対応製品

 ここでは、仮想化の方式と対応製品についてまとめます。
 仮想化のメリットは、物理サーバーの台数を減らすことができるため、サーバーの購入費用、省スペース化によるハウジング費用の節約が期待でき、費用削減につながること、と言われてきました。
 一方で、仮想化することによりシステムが複雑化し、障害復旧の難易度が上がること、仮想化によりレスポンスが悪化することなどデメリットもあり、導入にあたっては慎重な検討が必要と言われてきました。

 ところが、最近では、仮想化ソフト自体が高額であること、クラウドサービスの登場により非常に安価に仮想化インスタンスを利用できるようになったことにより、メリットであった費用削減効果がまったく意味をなさなくなりました。このため、一般企業において仮想化を使うメリットは非常に説明し難い状況となっています。クラウドサービス提供者側では、仮想化はもちろん必須の技術であると言えますが、利用者側企業で仮想化サーバーを構築することは今後なくなっていくのかも知れません。

1.仮想化の方式


 仮想化の方式は、上図のようにホスト型、ハイパーバイザ型、コンテナ型に分類されます。

 ホスト型は、ホストOS上で仮想ソフトウェアが動作する方式で、ホストOSが稼働している環境でないと、仮想化を利用できません。通常、ホストOSに仮想化ソフトウェアをインストールし、仮想化イメージを作成して利用します。

 ハイパーバイザ型は、ホストOSを必要とせず、ハードウェア上で直接仮想化ソフトウェアが稼働します。このため、ハイパーバイザ型はホストOSによる余計なオーバーヘッドがない分、高速に動作します。起動時のBIOSやUEFIの構成など、詳細な設定が可能です。

 コンテナ型は最も新しい仮想化の方式です。ホスト型と同じくホストOSを必要としますが、仮想化ソフトウェアによって仮想化されるイメージはコンテナと呼ばれるもので、目的のアプリを利用するために必要最低限の機能に絞ってイメージングされたものです。これを利用することで、仮想マシンを作成する、いわゆる、OSの機能を全て仮想化するホスト型に比べ、無駄なサービスを起動しないため、高速になります。仮想化ハードウェアも不要な追加はせず、NICのみ最低限に絞って仮想化されます。


2.ホスト型の製品

 ホスト型の仮想化ソフトは、OSにプリインストールされているか、もしくは無償配布されているものばかりです。ハイパーバイザ型とは異なり、各プラットフォームでの動作チェックなど、開発環境、テスト環境目的で利用されることがほとんどです。

Windows Virtual PC と Hyper-V

 Windows7のProfessional以上のエディションには、Windows Virtual PC
 Windows8、8.1、10のpro以上のエディションには、Hyper-V
 が仮想化ソフトとして、プリインストールされています。


 Windows Virtual PCは「XPモード」を始め、Windows7上で仮想化イメージを利用するためのソフトでしたが、Windows8で廃止され、代わりにHyper-Vがプリインストールされました。
 このHyper-Vは名前は同じなのですが、Windws Serverのハイパーバイザ型のHyper-Vとは違いホスト型です。あくまでWindows Virtual PCの代わりとして用意されているものです。
 因みに、Windows8、8.1、10のHyper-Vはデフォルトで機能が無効化されていますので、利用したい場合は「アプリと機能」の「Windowsの機能の有効化または無効化」からHyper-Vを有効化する必要があります。


VMware Workstation Player

 ホスト型の仮想化ソフトです。以前は、VMware Playerという名前でしたが、スナップショット機能、開発者ツールの追加などにより、製品のアップグレードを行い、VMware Workstation Playerと名前を変更したとのことです。商用以外であれば無償で利用できます。

VMware Workstation Player(https://www.vmware.com/jp/products/workstation-player/workstation-player-evaluation.html)


Oracle VurtualBox

 Oracleが提供するホスト型の仮想化ソフトです。VMware Workstation Playerと違い、OSSで提供されています。GPLライセンスのもと、販売目的でなければ、商用利用も可能です。

Oracle VurtualBox(http://www.oracle.com/technetwork/jp/server-storage/virtualbox/overview/index.html)


Parallels Desktop

 米Parallel社が販売するホスト型の仮想化ソフトです。macOS上でWindowsを動作させる際に一般的に利用されています。

Parallels Desktop(https://www.parallels.com/jp/)


3.ハイパーバイザ型の製品

 ハイパーバイザ型の仮想化ソフトは、物理サーバーの台数を減らす等、本来の仮想化の目的を実現するために利用されます。有償の製品と無償のもの、両方あります。

Hyper-V

 Windows Serverのソリューションの一つとして、Windows Server 2008より提供が開始された、ハイパーバイザ型の仮想化ソフトです。Windows Server 2012、2016において、ドメインコントローラーと並ぶメインソリューションとして大幅な機能強化が実施されています。

 ソフトの費用は、サーバーの価格に含まれていますが、Windows Serverのエディションによって仮想化数が制限されます。
 Windows Server 2016 Standardでは、2インスタンス。
 Windows Server 2016 Datacenterでは、無制限です。

 ※Windows Serverについてはこちらでまとめています。


VMware vSphere

 仮想化のリーディングカンパニー、VMwareの主力製品。ハイパーバイザ型の仮想化ソフトです。主に、以下のようなエディションが有ります。

エディション 参考価格 備考
VMware vSphere Standard ¥138,305 - 年間サポート費用は2種類
プロダクション(365日24時間):\44,897-
ベーシック(平日日中12時間):\37,947-
VMware vSphere Enterprise Plus WMware認定リセラー(ITベンダー)経由で販売
VMware vSphere
with Operations Management Enterprise Plus
WMware認定リセラー(ITベンダー)経由で販売

VMware vSphere(https://www.vmware.com/jp/products/vsphere.html)


Xen

 無償のハイパーバイザ型の仮想化ソフトです。OSSで提供されています。GPLライセンスのもと、販売目的でなければ、商用利用も可能です。
 反面、サポートや障害対応は自身で行わなければなりません。しかし、ハイパーバイザ型の仮想化ソフトの障害についてはシステム全体に及ぶ障害となるコア部分にあるため、Xenの本番環境導入は、余程手厚いベンダーのサポートが期待できない限り、難しいと思われます。
 メーカーとしてはネットワーク機器メーカーであるシトリックス・システムズ(CITRIX)が深く係っており、Xenを用いた仮想化サーバーXen Serverを販売しています。


Xen Project(https://www.xenproject.org/)


KVM

 Linuxカーネル2.6.20以降に標準搭載されています。ハイパーバイザ型の仮想化をカーネルが行います。ゲストOSとしてLinuxだけでなく、Windowsも利用できます。
 CPUが仮想化対応のIntel VTまたはAMD-Vでなければならない等、ハードに制限事項が多く存在します。


4.コンテナ型の製品

Docker

 無償のコンテナ型の仮想化ソフトです。OSSで提供されています。Apacheライセンスのもと、自由に利用できます。
 サーバーOSを仮想化するのではなく、必要とするサービスのみを仮想化して運用する軽量な仕組みのため、ホストOSに依存するとはいえ、レスポンスの悪化はそれほどなく、充分本番運用に耐えうるレベルです。
 反面、サポートや障害対応は自身で行わなければなりません。ハイパーバイザ型ほどの難易度はありませんが、仮想化ソフトの障害についてはシステム全体に及ぶ障害となるコア部分にあるため、Dockerの本番環境導入は、余程手厚いベンダーのサポート、又は、自身で障害回復できる高いスキルがないと、難しいと思われます。


Docker(https://www.docker.com/)



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