「平成→令和」で振り返る和暦変更時のシステム対応

 和暦は不定期に更新が発生するため、システム的に扱いにくく、できれば西暦でシステムを統一したいものです。
 しかし、裁判所をはじめ、多くの公的機関の文書のデフォルトは和暦であり、民間企業であっても、役所への提出申請資料には和暦が多いため、和暦へのシステム対応がどうしても必要なケースは多いです。

 和暦変更時、システム的には改元日新元号が情報として必要です。
 ここでは「平成→令和」のときに、必要な情報である改元日、新元号が、いつ発表になったのか、Microsoftの更新プログラムがいつ提供されたのかを中心にまとめています。


 先に改元日が発表となりました。平成29年(2017年)12月1日開催の皇室会議にて「平成31年(2019年)4月30日」に生前退位、「平成31年(2019年)5月1日」から新元号となりました。

 次に新元号は平成31年4月1日に発表されることが平成31年1月4日の首相年頭会見に発表され、平成31年4月1日の11時41分(当初11時30分発表予定)に令和と発表されました。

 つまり、今回必要な情報がすべて提供されたのは平成31年4月1日の11時41分ということになります。生前退位ということもあり、システム対応は、平成31年5月1日まで約1か月の準備期間があったということになります。


1.和暦を整理

 まずは、現状の和暦を大正から令和までまとめます。

 1926年、1989年、2019年について元号が重複します。

  ~1926年12月24日 :大正
  1926年12月25日~1989年1月7日 :昭和
  1989年1月8日~2019年4月30日 :平成
  2019年5月1日~ :令和

 ということでシステム的には結局、年単位で和暦の判定はできず、日単位で判断するしかありません。

 下表のように、2023年時点で、大正15年生まれは97歳ということになります。大正への対応はほぼ必要なくなっています。

2.和暦の命名規則

 過去に遡ると4文字の元号もありますが、元号法に規定されず明確ではないものの、

・漢字2文字
・略称アルファベットが過去と重複しない

 と、「元号に関する懇談会」で規定されています。

 また、2018年1月3日の発表で、政府は「1文字15画を上限とし、できる限り画数の少ない漢字を選ぶ方針」と発表しました。

「令和」はこの規則通り漢字2文字、略称アルファベット"R"、令=5画+和=8画となっています。

3.和暦合字

 和暦合字とは以下のような和暦2文字を1文字であらわす環境依存文字です。

 約1か月の猶予がありましたが、2019年5月1日対応は間に合わず、2019年5月15日の更新プログラムで令和の和暦合字が追加されました。

 シビアなシステムでは、和暦合字は利用しない方が良いと思います。
 ちなみに文字コードはUnicodeコンソーシアムにより事前に令和=UNICODE:32FFと決まりました。暫定対応としてWindowsアップデートが適用されるまでは「・」で表示されますが前もって入力することはできました。

4.日本語変換(IME)

 「レイワ」と入力しても予測変換に令和とは表示されませんが、更新プログラムで対応すると、事前にMicrosoftよりアナウンスされていました。

 約1か月の猶予がありましたが、2019年5月1日対応は間に合わず、2019年5月15日の更新プログラムで令和の予測変換に対応しました。

 更新プログラムに頼らず、改元日前にIMEのプロパティから新元号を自前で単語登録しておくのが、正しい対応かと思います。

5.Microsoft Office関連

 和暦変更に影響がでるのは、
・セルの書式設定(和暦)
・DATESTRING関数
・FORMAT関数で"ggg"や"gggg"を利用している場合

 などです。

 これらも、更新プログラムで対応すると、事前にMicrosoftよりアナウンスされていました。

 約1か月の猶予がありましたが、2019年5月1日対応は間に合わず、2019年5月15日の更新プログラムで対応しました。

 日頃から和暦関連の関数、書式は利用しないように社内で統一しておいた方が良いとかと思います。

6.令和1年か令和元年か

 「令和1年」と表記するか「令和元年」と表記するかですがMicrosoftの各種関数、書式等すべて「令和1年」がデフォルトになりますが、これはレジストリの登録により「令和元年」に変更することができます。詳しくはこちらの「元年 対 1年」に記載されています。ただし、更新プログラム適用が前提条件です。

7.「平成」→「令和」考える和暦変更時のシステム対応総括

 そもそも新元号が1か月前の平成31年4月1日に発表される理由として「システム対応等、社会的混乱を回避するため」とのことでした。なかには改元前日の平成31年4月30日発表を主張する古典的な皇室論者もいたそうです。
 マイクロソフトは「日本の新元号への対応の重要度は高いと考えており、全社態勢でソリューションの準備に取り組んでいます。」として10連休突入前の2019年4月26日までに、更新プログラムの提供を目指しましたが、結果、間に合わず、Win10/8/7の各バージョンごと4月26日より数週間かけて段階的アップデートを行う方針を発表しました。

 その他会計ソフトウェアベンダーやフォントベンダーが令和対応について対応時期をアナウンスしていましたが、遅れるところも、ちらほら見かけました。

 今回のように、生前退位で1か月猶予期間があっても、この結果ですので、ご崩御による即日改元の場合にWindows Updateが即時対応できるはずはありません。このため即日対応が必要なシビアなシステムでは、自前で和暦対応するしかないと云えます。また和暦合字等ベンダーの更新に依存するものは、平常時から利用のしないように社内で徹底しておくべきかと思います。



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