2つに分かれるIT業界

 現在、新規上場の約7割がIT関連企業というように、IT業界は夢をつかむチャンスに満ちた業界だと言えるかもしれません。
 そんな、華やかなイメージもあるIT業界ですが、実際は大きく2つに分かれます。


  • システム請負を中心としたSIerの業界

  • 自らがITサービスを実施する業界

1.システム開発を請け負うSIerの業界

 官公庁および上場企業を中心とした大手企業の業務システム開発・保守・運用を行ういわゆるSIerの業界です。日本の総売上げの7割が上場企業およびそのグループ企業で占められると云われています。

 例えば「TIS」という会社。三菱UFJ銀行の金融システムを請負開発している東証一部上場企業です。

 SIerとして超優良企業で、西新宿の高層インテリジェントビルを占拠し、三菱UFJ銀行との長年の取引によって得た信頼関係を元に、着実な成長を続けます。UFJグループのクレジットカード等の金融システムも担います。

 データセンターの建設、運営も行い、経営の多角化も行われています。このような環境の中、TISの社員の方はある意味IT業界の中で非常に安定的に働けます。


 このTISと同様の会社としてSCSK、日本ユニシス、野村総研、オージス総研などがあります。システムを請負、受託開発する会社でこれらを「SIer」や「システムインテグレーター」と呼びます。

 日本ユニシスは官公庁のシステム請負で有名です。野村総研はコンサルもこなします。オージス総研は大阪ガスの情報システム部門が子会社化され独立採算となり、大阪ガス以外のシステムも請け負うこととなった会社でこのパターンの会社も非常に多いです。

 一方、日本電気(NEC)、富士通、日立、IBMについてはSIerでもありますが、パソコンやサーバーの製造販売を行うメーカーでもあります。これらをメーカー系SIerと言います。

 オラクル、シスコ、SAP、マイクロソフト、DELL、HP等メーカーはSIerにはあまり踏み込みません。機器やソフトウェアを製造販売するのみです。このようなメーカーを「ベンダー」と呼びます。


 なお、SIerは「情報システムの構築において、IT戦略の立案から設計、開発、運用・保守・管理までを一括請負する情報通信企業」のことと定義されます。

 近年のシステム開発においては、技術が多角化ししており、SIer単独で全てを開発することは不可能となっています。このためSIerは専門技術や知識を持つ他企業を下請けとして利用し自らは指揮者の立場でシステムを完成させます。

 この請負形態の中、SIerは「プライムベンダー」と呼ばれ、下請け、孫請けの企業は「ベンダー」と呼ばれます。システム開発を依頼するクライアント企業については「プロパー」と呼ばれます。

 通常、機器やソフトウェアを製造販売するメーカーをベンダーと呼びますが、統合的にシステムという商品を作り上げるという意味で、Sierをベンダーと呼ぶことがあるのです。


 ここまでで名前を挙げたような会社は、社内教育もしっかりしており、終身雇用の中で、素晴らしいキャリアを築いていけることと思います。


 反面、これらSierの下請け会社、孫請け会社。

 IT技術者を派遣するだけで、実際は人材派遣会社と何等変わりません。元請のSierが求める人材を探し、現場に入場させ、月々入る費用の、およそ3割を徴収します。

 これらの会社の中には、もちろん良心的な会社もあるとは思いますが、総じて終身雇用は期待できない場合が多いです。会社の特徴として自分の会社に机がない、会社にITの技術者はおらず営業社員だけ、就職の面接に行ったら別の会社に連れていかれた、社員教育が形式的というかほぼない、といったところでしょうか。


 他の業界でも、元請、下請、孫請、同じような構造になっていますが、IT業界は特に下請、孫請の終身雇用が守られない業界です。いくら技術力を上げても50才を超えると案件が入らないというシビアな面を持ちます。


 ~ この業界で主に利用される技術 ~ 

 昨今クラウド化が進みますが、企業系のシステムはまだまだオンプレミスが多く、そして自前でシステムを構築してるところが多いです。その中で利用される技術は以下の通りです。

項目 技術
クライアントOS Windows
サーバーOS Windows Server
データベース Oracle、SQL Server
プログラミング言語 Java、.NET(C#)

 この業界の特徴として、有償のアプリケーションを利用するのが一般的です。正直、会社に利益が出ているならは税金で持って行かれるか、設備投資に回すかという話で、アプリケーションを買った方が、何かあった時にベンダーにサポートを依頼できますし、その方が良いとなります。
 このため、Oracleのように非常に高価な製品でも、システム関連の必要経費として普通に導入されます。

2.自らがITサービスを実施する業界

 Google、楽天、amazon、DeNA、サイバーエージェント等自らがITサービスを提供する会社のことです。最近ではリクルートも様々なWEBサービスをリリースしIT企業のようになってきました。 新規上場の約7割というのはこの業界のことで、SIerの話ではありません。 一角千金のギャンブルのような業界で、シェアの勝者となれば莫大な利益が入る反面、入れ替わりの激しい厳しい業界です。この業界で働く方は終身雇用は無理と割り切った方が良いです。 技術者であれば、自分の技術で会社を渡り歩く覚悟を決めてください。その代り、成功時の出世が速く、いきなりCIOとかある意味面白い業界ではあります。


 ~ この業界で主に利用される技術 ~ 

 この業界はクライアントOS以外は、ほぼOSSを利用します。

項目 技術
クライアントOS Windows、macOS
サーバーOS Linux or AWS利用
データベース MySQL、PostgreSQL、MongoDB
プログラミング言語 WEB:PHP、Python
アプリ:Java、Swift

 サーバーOSはLinuxでしたが、最近は自前でサーバーを立てず、すべてAWS等クラウドで対応するようになりました。

 データベースはMySQL、MariaDB、MongoDBなどのOSSが利用されます。。
 プログラミング言語は2系統でWEBサービスにはPHP、Python、Ruby等OSS、アプリ開発ではAndroid系はJava、iOS系はSwiftが利用されます。

 技術面で言うと、この業界の方が最新の技術を素早くキャッチアップできますので、自身の成長につながります。



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