AMDのCPUラインナップ

 以前はインテル一択だったCPU市場ですが、2017年3月、AMD社がCPUの新ブランド「Ryzen」シリーズを発売し、これ以降、徐々にシェアを伸ばし、現在では30%に迫るシェアを獲得しています。
 「Ryzen」発売時点ではまだ技術的にインテルに及ばない部分もありましたが、現在では特に製造プロセス(リソグラフィー)技術においてインテルに先んじています。一方で、DDR5対応についてはインテルに遅れを取っており、一長一短の状況となっています。

1.AMD「Ryzen」シェア拡大の経緯

 AMD社はRyzenシリーズを発表する以前から、Athlonシリーズ等CPUの販売を行っていましたが、インテルに押され、ほとんどその存在感を示すことのできない状態になっていました。

 しかし、2016年、Zenと呼ばれる以前のCPUとは全く違う高性能なCPUアーキテクチャーを開発し、2017年3月、Ryzenシリーズとして商品化しました。これによりインテルのCPUと性能面で対抗できるようになり、インテルのCPUより低価格に抑えることで、シェアが拡大しました。

 2021年11月現在、AMDのシェアは30%に迫ります。

 このシェア拡大の要因は、特に製造プロセス(リソグラフィー)において、インテルに先んじて7nmを発売し、技術的に優位に立っているからです。

 しかし、この製造プロセス(リソグラフィー)の技術は、AMDの技術ではなく、AMDからCPU生産の委託を受けるTSMCという台湾の会社(半導体ファウンドリ)の技術です。
 TSMCはCPUというより、アップルやクアルコムの委託でスマートホン向けのSoCの生産をメインに行っていました、その後AMDからの委託でパソコン向けCPUの生産を始めていますが、そもそも極小のSoC開発で技術力を上げて来た会社なので、CPUのリソグラフィの開発力は世界的にずば抜けており、3nmの開発も始めていると云われています。
 これに対し、インテルは毎年発表する新世代CPUのロードマップにおいて第10世代(2019年)では達成する予定だった7nmが、第12世代(2021年)でも達成できず、TSMCの基盤購入の話まで出ている状況です。
 このように、インテルの技術的な停滞、TSMCの躍進により、CPU市場においてAMDがシェアを拡大する状況となっています。


AMD Ryzen(https://www.amd.com/ja)



2.AMDのCPU製品の「ブランド」

 ~ ブランドのグレード ~


 【パソコン向け】

 Ryzen Threadripper > Ryzen 9 > Ryzen 7 > Ryzen 5 > Ryzen 3


 インテルとそっくりなグレード分けです。インテルのXシリーズの対抗製品がRyzen Threadripper。それ以外は、Coreの数字表記と同じものが対抗製品になります。


 ディスクトップ向けCPUは、GPUを内蔵せず別売り。CPUのクーラーも別売りです。


 企業向けのディスクトップ及びワークステーション用にはRyzen Proシリーズがあります。このシリーズはGPU内蔵、クーラー付モデルです。インテルvProシリーズに対抗したラインナップです。


 モバイル向けCPUは、CPUに高性能GPUを組み合わせたAPUとして販売されています。
 付属するGPUは、AMDが既にGPU市場で既に確固たる地位を築いている自社GPUのRadeonシリーズを採用しています。
 モバイル製品に高いグラフィック性能は今まで求められてきませんでしたが、VR、ARの進展により性能の低い内臓グラフィックではなくAPUが市場で求められるようになりました。


 【サーバー向け】

 EPYC


インテルのXeonの対抗製品です。



3.AMDのCPU製品の「プロセッサナンバー」

 例えばプロセッサナンバーがRyzen 9 5900Xの場合、

 Ryzen 9は、CPUブランドのグレードです。
 プロセッサナンバーの数字4桁の左1桁は世代を表します。
 この場合5900の左1桁目は5なので、第5世代だと分かります。

 ※サーバーCPU EPYCは逆で、数字4桁の右1桁が世代を表します。


 プロセッサナンバー数字4桁の後にアルファベット1字がつく場合とつかない場合があります。
 つかない場合は標準的な設計です。
 つく場合は以下の表によります。
 例の場合は「X」がつくので、最上位モデルであることが分かります。


【プロセッサナンバー末尾のアルファベットの意味】


アルファベット 種類 意味
X デスクトップ向け 各モデルの最上位モデルです。
G 共通 GPU(Radeon)が搭載されたAPU製品。
U モバイル向け 末尾に何もつかない標準版に比べ省電力。ただしベースクロックが低下。
H モバイル向け ディスクトップ並みのハイエンドCPUでありながら省電力。
HS モバイル向け 超薄型、軽量パソコン用。


4.AMDの最新CPU製品ラインナップ

【パソコン向け】

 第5世代CPUが、2020年11月に発売されました。「Zen3」という技術的な総称の元、インテル社に先立ち製造プロセス7nmを実現しています。

 2022年後半に第6世代「Zen4」のCPUが発売される予定です。

 第5世代はインテルCPUに対し製造プロセスで上回るものの、DDR5対応では遅れを取っており、第5世代はDDR4対応。第6世代(Zen4)でDDR5対応を予定しています。


 ~ ディスクトップ向け ~ 

プロセッサ
ナンバー
コア数/
スレッド数
定格クロック/
最大クロック
L3キャッシュ 製造
プロセス
内蔵グラフィック TDP 参考
価格
Ryzen 9 5950X16/323.4GHz/4.9GHz64MB7nmなし105W97,000
Ryzen 9 5900X12/243.7GHz/4.8GHz64MB7nmなし65W65,000
Ryzen 7 5800X8/163.8GHz/4.7GHz32MB7nmなし105W53,500
Ryzen 7 5700G8/163.8GHz/4.6GHz16MB7nmRadeon Graphics65W36,000
Ryzen 5 5600X6/123.7GHz/4.6GHz32MB7nmなし65W52,000
Ryzen 7 5600G6/123.9GHz/4.4GHz16MB7nmRadeon Graphics65W37,000

※製造プロセス、TDPなどCPUの性能を比較する指標は別ページにまとめています。



 ~ モバイル向け ~ 

プロセッサ
ナンバー
コア数/
スレッド数
定格クロック/
最大クロック
L3キャッシュ 製造
プロセス
内蔵グラフィック TDP 参考
価格
Ryzen 9 5980HX8/163.3GHz/4.8GHz16MB7nmRadeon Graphics45W
Ryzen 9 5980HS8/163.0GHz/4.8GHz16MB7nmRadeon Graphics35W
Ryzen 9 5900HX8/163.3GHz/4.6GHz16MB7nmRadeon Graphics45W
Ryzen 9 5900HS8/163.0GHz/4.6GHz16MB7nmRadeon Graphics35W
Ryzen 7 5800H8/163.2GHz/4.4GHz16MB7nmRadeon Graphics45W
Ryzen 7 5800HS8/162.8GHz/4.4GHz16MB7nmRadeon Graphics35W
Ryzen 7 5800U8/161.9GHz/4.4GHz16MB7nmRadeon Graphics15W
Ryzen 5 5600H6/123.3GHz/4.2GHz16MB7nmRadeon Graphics45W
Ryzen 5 5600HS6/123.3GHz/4.2GHz16MB7nmRadeon Graphics35W
Ryzen 5 5600U6/122.3GHz/4.2GHz16MB7nmRadeon Graphics15W
Ryzen 3 5400U4/82.6GHz/4.0GHz8MB7nmRadeon Graphics15W

※製造プロセス、TDPなどCPUの性能を比較する指標は別ページにまとめています。


【サーバー向け】

 サーバー向けCPUは第3世代が最新です。2019年7月に発売されました。


 ~ サーバー向け ~ 

プロセッサ
ナンバー
コア数/
スレッド数
定格クロック/
最大クロック
L3キャッシュ 製造
プロセス
内蔵グラフィック TDP 参考
価格
EPYC 776364/1282.45GHz/3.5GHz256MB7nmなし280W1,846,000
EPYC 754332/642.8GHz/3.7GHz256MB7nmなし225W615,000
EPYC 734316/323.2GHz/3.9GHz128MB7nmなし190W348,000

※製造プロセス、TDPなどCPUの性能を比較する指標は別ページにまとめています。



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