インテルのCPUラインナップ

 過去、CPU製品はインテル1社独占ともいえる状況でしたが、現在ではAMDが「RYZEN」シリーズの発売以降、特に個人向けCPU製品の分野で大幅にシェアを伸ばし、2021年11月現在、インテル70%、AMD30%のシェアとなっています。
 理由は、インテルの主に製造プロセス(リソグラフィー)の開発遅延によるものです。本来第10世代で10nmとなる予定でしたが実現できず、すでに7nmを発売しているAMDに大きく差をつけられました。
 現在、第12世代となったインテルのCPUですが、製造プロセス(リソグラフィー)は「Intel7」という独自の表記に変わりました。これは、実際10nmなのですが、3D立体構造であり、今までの指標では測れないため独自の表記としたとのことです。「7」と表記に付けるあたり、かなりの苦しさが見て取れます。
 それでも、企業向けPC、サーバーにおいては、その信頼性の高さからインテルのCPU製品が選ばれる場合がほとんどです。また、製造プロセスでは遅れをとるものの、第12世代では、AMDに先行してDDR5に対応しました。


1.インテルのCPU製品の「ブランド」

 CPUの性能は昔はクロック周波数だけで判断できました。しかし、クロック周波数を上げれば上げるだけCPUの発熱量が上がってしまうため限界となり、コア、スレッドなど他の様々な技術的要素により総合的にCPUの性能を上げるようになりました。このためCPUの性能を比較する際も同様、クロック周波数、コア数、スレッド数などを総合的に判断しなければならなくなりました。
 しかし、それでは消費者に分かりにくいので、インテルはXeon Platinum、Xeon Gold、Core i9、Core i7といった製品のブランド名を用いて、名前だけである程度のCPU性能グレードを判断できるようにしました。


 ~ ブランドのグレード ~


 【パソコン向け】

 Core X > Core i9 > Core i7 > Core i5 > Core i3 > Pentium > Celeron

※Core XはCore i9のプロセッサナンバー末尾にXのつくCPUの総称です。


 【サーバー向け】

 Xeon Platinum > Xeon Gold > Xeon Silver > Xeon Bronze


Core vProとは
 企業内で使われるPCの日常の運用管理業務を支援するのに適したハードウェアを備えていること示す目的でパソコンに与えられるブランド名です。
 CPUに付けられたブランド名ではありません。


2.インテルのCPU製品の「世代」

 同じCore i7どいうブランドでも第一世代、第二世代というように世代(発売時期)ごとに性能がアップデートされます。

 大まかにですが、世代が進むごと約20%~40%の速度向上が進められ、あわせて省電力化などの機能も進化します。

 2021年10月、第12世代「Alder Lake」が発売されました。
 AMDに先行してDDR5に対応しました。
 ※企業向けXeonは、まだDDR4


 Windows11に対応するCPUは、第8世代以降のCPUと第7世代のごく一部のCPUです。


【インテルCPU製品の世代一覧】

世代 発売時期 ロゴ 製造プロセス 対応メモリ Win11対応
第1世代 Nehalem 2008年 45nm DDR3 ×
第2世代 Sandy-bridge 2011年 32nm DDR3 ×
第3世代 Ivy-bridge 2012年 22nm DDR3 ×
第4世代 Haswell 2013年 22nm DDR3 ×
第5世代 Broadwell 2014年 14nm DDR3 ×
第6世代 Skylake 2015年 14nm DDR4 ×
第7世代 Kaby lake 2016年 14nm DDR4
第8世代 Coffee Lake 2017年 14nm DDR4
第9世代 Coffee Lake
Refresh
2018年 14nm DDR4
第10世代 Comet Lake 2019年 14nm DDR4
第11世代 Rocket Lake 2020年 10nm DDR4X
第12世代 Alder Lake 2021年 10nm DDR5
【最新】

※製造プロセス(リソグラフィー):CPUの半導体の回路線幅。小さければ小さいほど半導体の密度が上がり、結果同一面積により多くの半導体を配置することができ、CPUの速度向上につながります。


3.インテルのCPU製品の「プロセッサナンバー」

プロセッサナンバーの確認方法

 CPUのプロセッサナンバーは、Windows10の場合、スタートボタンを右クリック→「システム」をクリックすると、以下の画面が表示されます。この中の「プロセッサ」を見れば分かります。

 この場合プロセッサナンバーはCore-i7-4510Uです。

 プロセッサナンバーの数字4桁の左1桁は世代を表します。
 この場合4510の左1桁目は4なので、第4世代だと分かります。
 第10世代は数字5桁になりました。左2桁は世代を表します。
 例えばCore-i7-10700Tの場合の左2桁は10なので、第10世代だと分かります。
 第11世代からは、また数字4桁に戻りました。左2桁は世代を表します。

 ※プロセッサナンバーの数字が3桁の場合は第1世代です。


 プロセッサナンバー数字4桁の後にアルファベット1字(2字)がつく場合とつかない場合があります。
 つかない場合は標準的な設計です。
 つく場合は以下の表によります。
 上図の場合は「U」がつくので、超省電力CPUであることが分かります。


【プロセッサナンバー末尾のアルファベットの意味】


~ デスクトップ向け ~

アルファベット 種類 意味
XE デスクトップ向け 最上位モデルのXシリーズの中でも最上位。
各世代ごとのフラッグシップモデルです。
X デスクトップ向け 最上位モデルです。Xシリーズと呼ばれます。
倍率ロックフリーモデル。オーバークロック※が可能。
K デスクトップ向け Xに次ぐ上位モデルです。
倍率ロックフリーモデル。オーバークロック※が可能。
S デスクトップ向け 末尾に何もつかない標準版に比べ省電力。ただしベースクロックが低下。
T デスクトップ向け Sよりさらに省電力。さらにベースクロックが低下。

※オーバークロック:CPUに初期設定されているベースクロック周波数を上げて使用すること。発熱量が増えCPUの寿命を縮めてしまうリスクがありますが、本来の能力以上の速度を実現できます。実施は自己責任で、メーカー保証対象外の、もはやドーピングです。ただし、標準設定は安全重視すぎて、本来の性能を出し切れていないという話も聞きます。このオーバークロックを行うことが可能なCPUは倍率ロックフリーモデルであるX、Kのみです。


~ モバイル向け ~

アルファベット 種類 意味
HK モバイル向け モバイル向け上位モデルのHシリーズの中でも最上位。
各世代ごとのフラッグシップモデルです。
H モバイル向け モバイル向け上位モデルです。ハイパフォーマンス、ハイグラフィックス
※2018年4月モデルまでクアッドコアの場合「HQ」と表記されていましたが「H」に統一されました。
G モバイル向け モバイル向け上位モデルです。ハイパフォーマンス、さらにハイグラフィックス。APUと呼ばれる内臓グラフィックスではなくGPUを一体化した製品です。
B モバイル向け モバイル向け標準モデルです。
U モバイル向け 超省電力。
Y モバイル向け さらに超省電力。


~ デスクトップ向け/モバイル向け 共通 ~

アルファベット 種類 意味
F デスクトップ向け
モバイル向け
KF、F、HF等、各モデルの内蔵グラフィックスが無効化されたバージョンです。別途GPUを利用する場合に選択します。


4.【パソコン向け】インテルの最新CPU製品ラインナップ



 ~ ディスクトップ向け ~ 

 現在、新規購入する場合の選択肢となる、第10世代(Xシリーズのみ)、第12世代のCPUの一部です。
 第12世代でCore i3は、発売されていません。
 最上位のXシリーズは、第11世代、第12世代では発売されていません。

プロセッサ
ナンバー
コア数/
スレッド数
定格クロック/
最大クロック
L3キャッシュ 製造
プロセス
内蔵グラフィック TDP 参考
価格
Core i9-12900K16/242.4GHz/5.2GHz30MB10nm(Intel7)Intel UHD Graphics 770125W/241W78,000
Core i7-12700K12/202.7GHz/5.0GHz25MB10nm(Intel7)Intel UHD Graphics 770125W/190W54,000
Core i5-12600K10/162.8GHz/4.9GHz20MB10nm(Intel7)Intel UHD Graphics 770125W/150W38,000
Core i9-10980XE18/363.0GHz/4.8GHz24.75MB14nmなし165W129,000
Core i9-10900X10/203.7GHz/4.5GHz19.25MB14nmなし165W78,000


 ~ モバイル向け ~ 

 現在、新規購入する場合の選択肢となる、第11世代のCPUの一部です。
 第12世代のモバイル向けCPUは2022年春頃発売予定です。

プロセッサ
ナンバー
コア数/
スレッド数
定格クロック/
最大クロック
L3キャッシュ 製造
プロセス
内蔵グラフィック TDP 参考
価格
Core i9-11980HK8/162.6GHz/5.0GHz24MB10nmIntel Core UHD Graphics 45W/65W77,000
Core i9-11950H8/162.1GHz/5.0GHz24MB10nmIntel Core UHD Graphics 35W/45W73,500
Core i9-11900H8/162.1GHz/4.9GHz24MB10nmIntel Core UHD Graphics 35W/45W72,000
Core i7-11600H6/122.9GHz/4.6GHz18MB10nmIntel Core UHD Graphics 35W/45W52,000
Core i5-11500HE6/122.1GHz/4.9GHz12MB10nmIntel Core UHD Graphics 35W/45W34,000
Core i3-11100HE4/81.9GHz/4.4GHz8MB10nmIntel Core UHD Graphics 35W/45W31,000

※製造プロセス、TDPなどCPUの性能を比較する指標は別ページにまとめています。



5.【サーバー向け】インテルのCPU製品ラインナップ

 インテルのサーバー向けCPUはXeonのブランド名で展開されています。パソコン向けCoreシリーズとの違いは
・24時間稼働を前提とした高信頼性
・コア数の多さ
・最大搭載可能メモリの多さ
です。企業向けの大規模システムのサーバー用CPUとして利用されます。

 サーバー向けXeonブランドは、もともとはE7>E5>E3というブランド体系だったのですが、スケーラブルプロセッサーシリーズ(Platinum、Gold、Silver、Bronze)としてブランド名が変わりました。


【サーバー向け最新CPU製品ラインナップ】


プロセッサ
ナンバー
コア数/
スレッド数
定格クロック/
最大クロック
L3キャッシュ 製造
プロセス
内蔵グラフィック TDP 参考
価格
Xeon Platinum 838040/802.3GHz/3.4GHz60MB10nmなし270W1,070,000
Xeon Gold 633832/642.0GHz/3.2GHz48MB10nmなし205W345,000
Xeon Silver 421616/322.1GHz/3.2GHz22MB10nmなし100W119,000
Xeon Bronze 3206R8/81.9GHz/1.9GHz11MB14nmなし85W40,500

※製造プロセス、TDPなどCPUの性能を比較する指標は別ページにまとめています。



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